2010年8月10日火曜日

『壁画で繋ぐ世界-児童文化交流 2』〜日墨文化交流児童合作壁画(2007.3)



なによりも、毎日の制作を通して深くなる子どもたちの友情、そして滞在を通してお世話になるホームステイの家族との交流が、子ども達の描く壁画をより一層力強いものとします。言葉や文化の違いを乗り越え、自分の気持ちを伝え、分かり合えた時の喜びを子ども達は強く感じ、その絆が協力して1つの壁画の世界を創り上げるという心を育てます。

ラパスはクジラが毎年出産に訪れることで有名な場所で、市内観光でクジラの骨の野外展示を見学しました。大きなクジラの骨を自分の目で見て感激した日本の子どもは、メキシコの子どもと力を合わせて、クジラの骨をダイナミックに描きました。
また、大人がビックリするくらいの早さで、子どもたちは互いの言葉を覚え、覚えたてのスペイン語、日本語が飛び交い、制作現場を和ませました。
「ブエノスディアス!」「アミーゴー!」「オハヨウ!」「アリガト!」

初めてのホームステイで最初は不安で緊張気味の子ども達も、実際に現地の家族と過ごしてみると、言葉が少ししか通じなくても、手振りや笑顔と心ですぐに仲良くなれたことに大きな喜びを感じます。毎朝制作前は、ホームステイの家族とどこに行った、どんな夕飯を食べたかという話題で持ちきりです。
メキシコの家族の皆さんも、初めて受け入れる日本からの子どもにとても親切にしてくださり、メキシコの子どもより小食な日本の子を心配して「どんな食事が食べたい?」「夜は良く眠れているか?」「うちの子ども達は、はしゃぎ過ぎて迷惑をかけていないか?」などなど、驚くほど気を使ってくれました。日本の子どももそんなホームステイの家族の気持ちを感じて、段々と緊張が解けて、制作にも力が込められました。





完成間際には、この壁画に両国の子ども達の親善と友好を表す、「いつまでも友だち SIEMPRE AMICOS」と両国の言葉で力強く描かれました。壁面が描かれた国立人類学歴史学研究所南バッハ・カルフォリニア州博物館のアレハンドロ博物館館長も「(壁画は)連帯感と友情を確かに伝えることができました。」と会報に掲載したお便りに述べられました。

制作総指揮を務めた西森禎子先生により生命の源初、生命の大切さを表現した「命の誕生」が描かれ両国の子どもの合作壁画と共に飾られました。そして、子ども達の壁画が“生命の糸”に包まれて「大地」「海」「命の誕生」の感性がひとつになった大壁画が誕生しました。






壁画完成式典には、参加児童、制作スタッフ、そしてホームステイの家族や親戚の方も大勢集まり、お互いの国の踊りを披露したり一緒に踊ったりと、賑やかに壁画の完成を祝いました。



下絵制作で描かれた1人1人の子ども達の絵が、壁画の一部としてしっかりと融合して、1つの壁画の世界を創りだしました。こうして、現地で両国の子どもが下絵から一緒に制作をして、ひとつの壁画が完成するからこそ、お互いの文化を知り、友情を大切にする交流に結びつくのでした。