いよいよ、ICFA行事「小さな造形の旅~ガラス制作体験~」の開催が近づいてきました。
今回の企画・指導を担当するガラス作家イゲタミレイさんは、1989年に開港130周年記念横浜博覧会の壁画制作に関わったことがきっかけで、2010年よりICFAの理事・企画指導を務めています。「小さな造形の旅~ガラス制作体験~」開催直前記事といたしまして、イゲタミレイさんにガラス作家として、ガラスの魅力やガラスの制作を始めるきっかけなど創作活動について伺いました!
■ガラスを表現の手段として選んだきっかけはなんですか?
小さい頃からキラキラしたものが大好きでした。
広告の宝石の写真を切り抜いてあつめたり、石英の入った石ころを探してあつめたり、スイミングの時に水の中から見上げる水面が大好きで、水の中で上向きに沈んでずっと眺めていたりしました。
ガラスの持つ素材自体の魅力と、それを表現しきれない人の力の未熟さを常に感じつながら、少しでも近づけるといいなといつも思っています。
■どこでガラスを勉強したのですか?
多摩美術大学の立体デザイン学科クラフトデザインの中のガラスコースで学びました。
当時は大学でガラスのコースで吹きガラスの設備があるの大学は多摩美術大学だけでした。
大学の設備も最小限しかなく、入学しても1~2年生はガラスで何かを作ることはほとんどできず、吹きガラスの設備も3年生になってからやっと使える、というカリキュラムでした。
(私の場合は、幸い運良く2年生の時に新校舎・新工房が設立され、2年生の半ばからガラスに触れることができました。)
けれども、ガラスに触りたいけれどさわれない分、その間デザインの基礎をしっかり学ぶことができました。
立体デザイン学科の中にはプロダクトデザイン専攻と、インテリアデザイン専攻もあり、そういった目指すジャンルの違う友人達に囲まれて学ぶことができたのは今となってはとても貴重な経験です。
■どんな作品を制作しているのですか?毎回テーマなど変わるのですか?
両親が建築家、ということもあり、空間に対して、常にすごく興味を持っています。
器や、実用のもの、というものよりも、空間に対してアプローチできるような作品をつくりたいと思っています。
ガラスというのは、光を透過したり、屈折によって光をためこんでいるように見えたり、反射したり、光の様々な表情を変化させる素材だと思っています。
主にガラスを使って制作していますが、素材の力を出すという意味で他のいろいろな素材と組み合わせて作ったりもします。
■ガラスで制作するチャレンジはなんですか、そして優れた点はどこですか?
私は溶けているガラスが大好きです。溶けているガラスは重力や遠心力、といった自分ではコントロールしきれない力によって形を変化させていきます。
自分ですべてコントロールできない分、素材をじっくり観察し、素材の気持ちを考えてみたり、そうやって対話しながら制作するのです。
作業中のガラスの温度は測ることができないので、経験と勘でその状態を察し、手を加えて行くと、ガラスが形を変えて行く中で『今だ!』というような瞬間があります。
その、火の神様が降りて来たような瞬間はとてもぞくぞくします。
もちろん失敗も沢山ありますが、そういった失敗こそが次に自分の目指すものへのヒントとなり、イメージを形にすることができるようになると思っています。
その、なかなか思い通りにならないもどかしさ、こそがガラスで制作することの一番の魅力なのかもしれません。
「火の神様が降りて来たような瞬間」という表現から、ガラスという素材の瞬時の変化を一瞬で捉えて制作をする、その創造の喜びと挑戦が伝わってきます。今回の「ガラス制作体験」では、このような作家の視点からのガラスの魅力や作家の制作現場をお伝えできるかと思います。