ICFAの活動に関わるスタッフの力を紹介するシリーズの第三弾は、海外での壁画制作の制作現場で通訳を担当する通訳スタッフを紹介します。
海外での「児童合作壁画交流」に必要不可欠な通訳スタッフは、より良い制作と交流ができるよう壁画制作に関わる様々な人の間で通訳をおこないます。壁画指導者の指導にあわせ、時には厳しい姿で通訳をおこない、また制作中の子どもの必死な発言には、彼らの気持ちにきちんと寄り添った通訳をおこないます。ICFAの通訳スタッフ以外にも、現地で日本語を勉強中の学生さんや留学中の日本人学生さんが通訳スタッフとして加わり、制作現場であちらこちらから聞こえる「通訳して~!」「ヘルプ~!」の声に駆けつけます。
成田空港を元気に出発し、旅行気分ではしゃいでいた参加児童も、現地に到着し現地のスタッフ、子ども達、ホームステイの家族の歓迎を受けて一気に「海外に来た!」と実感します。日本の子ども達は「言葉が通じるかなあ」という不安と緊張が混じった表情で、通訳スタッフに助けを求めます。しかし、そんな日本の子ども達の不安をよそに、日本からの子ども達の到着を待ちわびていた現地の子ども達は親切に優しい言葉で話かけてくれるので、日本の子ども達もなんとか彼らについて行こうとします。通訳スタッフは両国の子ども達が交流の第一歩を踏み出せるように、様子を見守りながら通訳のサポートをします。
そして、通訳スタッフの一番の力の見せ所は、指導者が子ども達の創造性を引き出し、1つの壁画の世界を作る為に神経を集中させる下絵制作の通訳です。指導者の話や問いかけで、両国の子ども達が共同でアイディアを出し合い、下絵の制作を行います。この頃になると、日本の子ども達はいよいよ「海外に、壁画を描きに来た!」と実感が湧いてきます。真剣な目つきで、壁画指導者の話や子ども達の発言を聞き、自分の意見を言うようになります。通訳スタッフは指導者と子どもの会話の通訳を一気におこない、同時通訳者さながらの大仕事となります。また制作中、指導者の言葉を的確に現地の子どもやスタッフに訳すには、感性がとても重要となります。なぜなら、ICFAの指導者が大切にしている「引き出す」や「全体の調和」という言葉を単純に外国語にするのでは、その真意が十分に伝わらないからです。その言葉が指導者から出た思いや考えを瞬時に汲み取って通訳をおこなわないと、創造性溢れる現場の通訳にはなりません。同じように、現地の子どもの発言を指導者に通訳する際も、その子どもの気持ちに寄り添い、子どもの気持ちを汲み取って丁寧に通訳するように努力します。
徐々に日本の子ども達は制作が進むにつれて、現地の子ども達とも打ち解けて、やっと「海外に壁画制作と、そして交流をしに来た!」と実感します。この頃になると、通訳スタッフに完全に頼るということも少なくなります。自ら片言でも現地の言葉を話し、また表情や身振りで伝えることを覚えて、積極的にコミュニケーションをとろうとする姿が見られるようになります。この子ども達の成長の様子に通訳スタッフは安心するのですが、この頃になると、ホームステイの家族から「(うちの子どもと比べて)あまりにも小食なのだけど、どんな食事が食べたいか希望があれば聞いてほしい。」とか、「日本の家族に国際電話をさせてあげたいのだけど、どうか?」などの通訳を頼まれます。このように、日本の子ども達を我が子のように大切に思ってくれるホームステイの家族の優しい気持ちをきちんと含めて、日本の子ども達に通訳します。
このように海外の壁画制作交流で、通訳スタッフは壁画指導者と子ども達が制作に集中し、制作の現場でより良い交流が出来るように様々な人々のコミュニケーションをサポートしています。速いスピードで進んで行く制作現場で、制作に関わる人々の気持ちを汲み取りながらの通訳は大変ですが、通訳のサポートで交流や制作の現場がうまくいった時の喜びは通訳スタッフの醍醐味です!