今回の壁画のように野外での制作となると、天気という「自然の条件」からも大きく影響を受けるだけでなく、想定外の「壁面の条件」を突きつけられることもあります。
全体の絵の配置を終え、一人ひとりが少しずつ下絵を描き始めて制作を終えた初日。しかし、翌日の制作2日目、朝現場に到着したスタッフは息を呑むような状況に遭遇せざるを得ませんでした。というのも、昨日描いたはずの絵がそこにはなく、何らかの原因で壁面の下半分に描かれた絵が流れて消えてしまっていたのです。
原因不明のまま、子どもたちは必死に流れてしまった絵をいったん乾いた雑巾でふき取り、再度絵を描き始めました。しかし、描けども描けども絵の具は滴るばかり、それどころか壁は拭いても拭いても水が滴り、びしょびしょです。
スタッフは原因をさぐるべく、指導中何度も話し合いを持ちました。そして壁画制作のための下地作業をしてくださった業者さんの助言もあり、なんとかその原因が判明しました。今回のアイススケートリンクの外壁面での制作では、スケートリンクの氷の冷気と外の空気の温度差によって、壁面に結露が発生し、その部分に描かれた絵に影響が出てしまいました。急遽、大型扇風機が運び込まれ(幸運にも建設関係の方の配慮により)、その部分を集中的に乾かし、その後快晴つづきという天候にも恵まれ、なんとか制作続行できました。制作途中は無事に完成することすら難しいとさえ思えたのですが、それらの困難をを乗り越えて壁画が完成した時は、やはり喜びはひとしおでした。この様に、壁の特性に悩まされた今回の壁画でしたが、やはりそれも壁画の醍醐味なのでしょう。
ICFAは会報や通信にて、制作の記録や参加した子どもたちの感想等を掲載し、壁画の完成だけでなく、制作現場や過程を紹介しています。今回の壁画制作の様子は、ICFA通信vol.17と特別制作された記念ポスターにて紹介しました。特に、記念ポスターは壁画の全体と細部が楽しめて、何度観ても新しい発見があります。