2010年8月2日月曜日

『壁画で繋ぐ世界-児童文化交流1』〜日墨文化交流児童合作壁画(2007.3)





ICFAは世界各地の子どもたちと日本の子どもたちの共同作業による「児童壁画交流」の活動を行っています。

児童合作壁画とは言いますが、海外の滞在期間は10日前後と限られており、異国の地で壁画を完成させるのは至難の業です。
そこでよく、「海外で壁画を描く為には、日本で壁画の元となる下絵を準備していくのでしょ?」尋ねられます。

「いえいえ、現地に行ってから両国の子どもが下絵を一緒に描き、壁画を完成させます!」

ICFA壁画交流20周年記念プロジェクトとして2007年にメキシコ・ラパスで行われた「日墨文化交流児童合作壁画」制作も、両国の子どものコラボレーションで完成した壁画です。


実際の壁面に描く絵ももちろん大切なのですが、それ以上に壁画制作の最も重要な作業となるのは、たくさんの要素から子どもたちの創造性を引き出し、一つの世界を作り上げる下絵制作です。


まず、子どもたちには両国のことを良く知ってもらう為に、両国の神話や伝説を紹介します。初めて触れる互いの国のお話から子どもたちは想像力を膨らませ、南バッハ・カルフォルニアの原住民の神様「ニパラハ伝説」が壁画に描かれました。また、日本の桃太郎の昔話から発想を得て、桃太郎がメキシコの神話の神様と一緒に砂漠の中を元気良く歩く姿が描かれました。この様に、子どもたちの想像力はどんどん広がり、壁画の要素を作っていきます。


また、その土地の自然を体験することも、子どもたちの創造力を刺激します。
エメラルドの海に囲まれ、砂漠の大地が広がるラパス。子どもたちは市内観光で観たラパスのエメラルド色の海に創造的刺激を受け、マンタやクジラが泳ぐ愉快な「海」の世界を描きました。海の世界では、浦島太郎や両国の国旗を持ったタコが仲良く遊んでいます。このタコは市内観光で訪れた市場で見た、紫色のタコから閃いたのでしょう。このように現地を訪れてから下絵を描くことによって、見るものすべてが新鮮に映り、現地を訪れた子どもにしか描けない独特の世界観が生まれます。







カストレーニャ遺跡の古代壁画見学では、険しい岩山砂漠を歩いて、苦労して見た古代の壁画がとても心に残ったという子どもの感想もありました。その道中、サボテンの刺に刺されないように歩いた体験(日本では滅多に体験できません!)から、壁画に描いた子どもたちのサボテンのトゲトゲにも力が込められています!



そして、現地の神話や体験だけでなく、一緒に制作する仲間からもどんどん創造の力が広まっていくのでした(つづく)